そろばんが繋いでくれた縁
人生何が起きるかわからない
いやいやいや,そんなことはない!自分の人生なんて高校選択くらいから大体予想はつくでしょ!
ずっとそう思っていた私の考えは,約2年前にガラッとかわりました。ここからは自己紹介とともに,なぜそうなったのかをお話ししようと思います。
小学生になる直前,私は坂本珠算学校(現:坂本珠算スクール)でそろばんを習い始めました。すぐに,丁寧に優しく教えてくださる先生方が大好きになり,そろばんも好きになりました。決して上達が早かったわけではありませんが,徐々に上の級や段位が目指せるようになり,目標を一つずつ達成していく中で,私にとってそろばんは自信を与えてくれる大切な存在になっていきました。
しかし,中学生になると部活動と珠算学校の時間がかぶるため,珠算学校は続けられず,さらに家の都合で高校入学を機に名古屋に引っ越すことも決まり,寂しいけれど,そろばんとの関わりもこれまでかと思われました。
そして中学3年生になり,同級生が地元の高校を進学先に選ぶ中,名古屋の数多くある高校から私が見つけ出したのが,愛知商業高校です。
勉強が好きではなかった私は,「高校では勉強以外の何かに打ち込みたい」と心に決めていました。そのため高校探しは「打ち込める何か」がありそうな学校を,片っ端からネットで探すことから始まりました。
そして高校生として,「これなら3年間夢中になれる」と思えたのが珠算部でした。
中でも愛知商業高校珠算部は全国大会の常連であり,過去には全国大会2連覇を果たした強豪校でもあります。
学校説明会と部活動体験に参加した私は,一生懸命そろばんを弾き,部活について楽しそうにお話ししてくださる先輩方を見て,「ここで一緒にそろばんがやりたい!」とその場で愛知商業高校珠算部への入部を決意しました。
無事,愛知商業高校に入学し,そろばん漬けの毎日を送るうちに,2年生になっていた私は進路に悩んでいたとき,顧問からある言葉をかけてもらいました。
「そんなにそろばんが好きなら,教員になってこの部活の顧問をやったらいいじゃない」
それはまさに目から鱗でした。それまで教員になるなど考えたこともありませんでしたが,「そろばん教室の先生以外にも,そろばんを教えられる職業ってあるんだ」と気づかされたのです。そして約2年前,私は教員採用試験に合格し教員の道に進むことになりました。
これがまさに「人生何が起きるかわからない」と感じた瞬間です。
残念なことに現在勤めている高校に珠算部はありませんが,高校生のときに珠算部に所属して全国大会に出場していたという縁で,今は全国高等学校ビジネス計算競技大会の役員をさせていただいています。
社会人になってもそろばんに関わっているとは,そろばんを習い始めた小学生のときはもちろん,高校生のときも思っていませんでした。今はそろばんに関わって生きていけるうれしさを身に沁みて感じています。
好きなことを一生懸命やり続ける
高校3年間はそろばんばかりで勉強をあまりしていなかったので,教員採用試験の前はとても大変でした。一番苦手だった簿記の問題集を顧問から受け取って,必死に解いたのを今でも覚えています。
「がんばることは,なんでもいい。勉強でも,資格でも,部活でも,趣味でもいい。大切なのは,一つ決めてやり続けること。そうやって本気で取り組んだ経験は,これから面接のときに,『自分はこれをがんばりました』と胸を張って話せる力になる」これは私が担任するクラスで,4月に生徒に伝えた言葉です。
大切なことは,一生懸命続けること,可能なら極めることだと思います。続けたことは,自分の中に積もって力になります。結果が残せたら,それは誰の目にも見える価値あるものになります。それらは全て,どこかで必ず自分の役に立つときがきます。勉強ももちろん大切ですが,私の場合は高校3年間そろばんをがんばったからこそ,今があるのだと確信しています。
最後に
執筆の依頼がきたとき,「なぜ私?」と思ったのが素直な感想です。そろばんを教えているわけでもないし現役の競技者でもない私が,そろばんをご指導されている方々にメッセージを送るなんて…。ですが,そろばんについて語る機会などほとんどないため,そろばんが繋いでくれたこれまでの縁を振り返るとともに,そろばんを好きな気持ちも語らせていただきました。
近年は,部活動の地域移行により部活動をやらない中学生が増加しています。その影響か,高校でも部活動への参加が強制ではなくなっており,部活動人口は減少し,部活動大好き人間な私はとても寂しく感じています。
学級とは違う場所での人間関係の作り方や上下関係,敬語の使い方,忍耐力を身に付けたり達成感を味わったりするなど,部活動だからこそ身に付けられることはたくさんあります。部活動で輝いたり,部活動がきっかけで学校に通う(私のような)生徒もいます。
確かに教員は部活動の顧問になることで,さらに忙しくなってしまいますが,人生の中で一途に打ち込める貴重な時間を,部活動にかけたいと思う生徒もいるということを,考えてあげてほしいと思わずにはいられません。
同様に最近は商業科も減少しています。珠算や電卓の部活動は,商業科がある高校ならではです。商業科の授業を「商業科だからできる」「商業科でしかできない」といった魅力あるものにし,商業科を守っていくことが,ひいては珠算部を守ることにもなると思います。
今の私の目標は,全国高等学校ビジネス計算競技大会を盛り上げること,そして私の一番大きな夢は,愛知商業高校に勤務し珠算部の顧問になることです。
いつか,私が教えてもらった場所で,そろばんの楽しさ,面白さ,すばらしさを伝えていきたいです。そのために教員として自分の信念を持ち続け,これからもそろばんを含め自己研鑽に励みたいと思います。
